冬場の高血圧! 
高血圧の人は、冬はとくに注意が必要、ということがよくいわれます。寒いトイレ、寒い脱衣所、急に温度が下がる環境がよくないことも、すでに高血圧症の方はご存じでしょう。ではなぜ、夏よりも冬が危険なのでしょうか。
  「血圧」とは
 心臓が全身に血液を送りだすとき、血管壁にかかる圧力を血圧といいます。
 心臓は、収縮と拡張を繰り返しながら、血液の循環を行っています。血圧値は、心臓が収縮したときにかかるもっとも高い圧力を収縮期血圧(最大血圧)、拡張したときのもっとも低い圧力を拡張期血圧(最小血圧)として測定します。
  寒さは血圧を上げる
 冬場の高血圧が危険な理由は、寒い時季には高血圧の人に限らず血圧が上昇する、ということにあります。寒くなると血圧が上がるのは、一つに寒さへのストレスが関係しています。
 ストレスは、日常さまざまな形で私たちの身体を刺激していますが、そのストレスによって分泌されるホルモンがあります。このホルモンは血管を収縮させ、高血圧を誘発します。調べによると、冬はこのホルモンの量が増え、それは寒さによるストレスが原因と考えられています。
 もう一つ、冬に血圧が上がるのは、塩分摂取量が増えるからです。これは、塩分を多く摂っているというより、食事の量が全体的に多くなっているからといったほうがよいでしょう。
 冬は夏に比べて食欲が増す人が多いと思いますが、これは寒くなるとエネルギーを供給しようとする、身体の自然な生理現象です。そのため、塩分摂取量も増えてしまうことになるのです。
 以上の理由から、もともと血圧が高い人は、冬になるとさらに血圧が上昇してしまうため、合併症を起こしやすくなります。冬の高血圧は、この合併症の恐れが高いことから、注意が必要となってくるのです。
 
   
より慎重なライフスタイルを
 高血圧の人は、合併症を起こさずに冬を乗り切るために、次のことを心がけましょう。
■急な温度の変化に注意
 冬のトイレやお風呂場で、また寒い戸外にでたとたんに、心筋梗塞で倒れるといった例をよく耳にします。これは、暖かい部屋から急に寒いところに移ったために、もともと高血圧の人が急に血圧が上昇して合併症を起こしたからです。
 急な血圧の上昇を避けるためには、お風呂場や脱衣所を暖かくしておくことが必要です。小型の暖房器具をおくことをおすすめしますが、そうでなければ、沸かしたお風呂のふたを開けておいたり、シャワーをだして暖めておくなどして、工夫してください。
 トイレも同様で、暖房器具を置けなければヒーターつきの便座などにすると効果があります。
 また、外出するときは気温に適した服装をし、屋内、屋外での急な温度差に対応できるようにしましょう。

■減塩とエネルギー制限
 高血圧の人は、常に食事には気をつけていると思いますが、冬場はさらに意識して、減塩を励行しましょう。また、寒くなるとつい「熱燗であったまる」などの誘惑に負けてしまいがちですが、アルコールの長期多量接種は血圧を上昇させたり、降圧薬の効果を弱めたりします。さらに、エネルギーの過剰摂取にもつながり、ひいては肥満などによって血圧上昇をもたらすことにもなります。食事の量も含めて、エネルギーを摂りすぎないようにしてください。
■便秘を防ぐ
 便秘になると、トイレでいきむ時間が長くなりますが、寒いトイレでいきんだときに、脳卒中を起こす例も多くあります。食事は繊維質のものをしっかり摂り、適度な運動を心がけて、便秘をしないようにしましょう。
■充分な睡眠
高血圧にとって、ストレスは危険因子のひとつです。ストレスを受けた身体から疲れをとるためにも、充分な睡眠をとってください。また、睡眠時は血圧が下がります。活動時に上昇した血圧によって傷ついた血管壁を、修復する時間でもあるのです。
 血圧は高齢になるにしたがって変動しやすく、一般的に上がるものなので、壮年期から充分な注意を払ったライフスタイルを心がけておきましょう。また、現在、医師から降圧剤を処方されている場合は、自己の判断で服用を中止したりすることは危険ですから、必ず医師に相談してください。
 血圧は精神状態や活動の種類によってとても変動しやすいものです。あまり神経質に血圧の数値にこだわるのも問題ですが、まめに自分の血圧を測定して、正確な値を知っておくことも大切です。


ご不明な点は最寄りの医療機関にご相談ください。