皮膚が知らせる内臓の病気
  たとえば、大人になってからの吹き出もの(にきび)は、便秘やストレス、睡眠不足などが原因でできるといわれています。私たちの皮膚は、微妙な体調の変化に、敏感に反応しているのです。ですから、内臓の病気によって皮膚症状が現れることも、当然でてきます。それらさまざまな病気と皮膚に起こる症状のなかから、いくつかみていくことにしましょう。

   皮膚症状のケースで多いのは、心不全や腎臓病のネフローゼなどによる、浮腫(むくみ)、白血病など血液の病気による出血斑、血小板減少症などによる紫斑があげられます。
 ここでは、これらの症状のほかにも知られている、いくつかの疾病に特徴的な症状を紹介していきます。
   
【肝臓病と皮膚疾患】
肝臓病と関連してみられる皮膚の以上は多彩です。
  黄疸・・・血液中に胆汁色素が増え、そのために皮膚や粘膜が黄色くなる状態を黄疸といいます。眼球の白い部分も黄色くなり、全身が黄色になっていきます。黄疸が強いときには、浅黒くなって皮膚のかゆみも強くなります。
  クモ状血管腫・・・直径3mmから1cmほどの赤い糸くず状の発疹です。毛細血管が拡張したもので、よく見るよ、クモが四方に脚を伸ばしたような形をしています。顔、首、胸などの上半身にできます。
クモ状血管腫
  手掌紅斑・・・手のひら、とくに親指と小指のつけ根の部分が赤くなり、手の甲の色は変わりません。また、赤くなった部分には、やや熱っぽさを感じます。
手掌紅斑
  紙幣状皮膚・・・毛細血管が拡張し、不規則な線状の模様となって、両腕上腕部の外側、胸、背中に散在します。よく見ると赤い糸くず状で、毛細血管の拡張であることがわかります。その様子が、あたかも紙幣の繊維模様に似ていることから、この名がつけられました。
  その他の症状・・・肝硬変では、手の甲の皮膚の色が黒ずんで褐色になったり、女性化乳房といって、男性の乳房がはれてきたりすることがあります。
 これらの症状は、すべて肝臓の障害が原因となって起こるとは限りません。複数の症状が重なった場合は、肝臓病の可能性がかなり高くなってきます。

   
【糖尿病と皮膚疾患】
糖尿病は合併症が怖い病気ですが、そのひとつに皮膚症状があります。糖尿病になると、細い血管から太い血管まで病変が起こるので、そのために皮膚に症状が現われたり、また抵抗力も落ちるため、いろいろな感染症を起こしやすくなります。
  糖尿病性壊疸・・・足の指や足のふちにできる深い、なおりにくい潰瘍です。壊疸とは、血管に生じた病変によって血流障害が起こり、そこから先の組織が死んでしまう病気のことで、皮膚の色は、紫色や黒色に変わります。また、末梢神経に障害が起こっていると、痛みを感じにくくなるため、このような皮膚の病気や傷に気づかず、悪化させてしまうことがあります。
糖尿病性壊疸
  糖尿病性水疱・・・まれに見られる症状ですが、ひざから足首までの前面や手、足に、やけどのときのような水疱(水ぶくれ)ができるもので、あとを残さずに治ることが多いのですが、再発もしやすく、進行すると糖尿病性壊疸になります。
  糖尿病性浮腫性硬化症・・・うなじから上背部、肩の皮膚にできる、全体に硬くはれたようなもり上がりで、首が太くなったとか肩がこるといった異常として気づくことがあります。症状としては、さほど多いものではありません。
  その他の症状・・・糖尿病では、感染に対する抵抗力が低下するため、細菌感染によって「おでき」がうなじ、顔、胴体にできたり、また、皮膚が乾燥していたり脂肪が不足していると、かゆみを覚えたりします。
 糖尿病患者の約30%に、なんらかの皮膚症状があるといわれています。早期の発見が、糖尿病自体の管理にも、また、皮膚疾患の悪化防止にも、重要な決め手となります。

   
【膠原病と皮膚疾患】
膠原病とは、本来身体を守るはずの免疫機能に異常が起きて、逆に自己の組織を攻撃してしまうような病気を指す総称です。
  全身性エリテマトーデス・・・若い女性に多い病気で、全身の皮膚に赤い斑点(紅斑)がでますが、とくに顔面の両ほほに、蝶の羽の形をした赤い発疹(蝶形紅斑)が現れるのが特徴です。かゆみや痛みはありません。38度〜40度の発熱や関節炎を伴うことが多く、腎臓、肝臓、肺など多くの臓器に障害が起こる場合もあります。
蝶形紅斑
  皮膚筋炎・・・筋肉と皮膚に炎症が起こります。まぶたや目の周りにできる紅斑(ヘリオトロープ疹)が特徴的ですが、手指の関節、爪の周辺、うなじ、背中などにでる場合もあります。また、かゆみやむくみを伴うこともありますが、発症率の高い病気ではありません。
  全身性強皮症・・・手や顔の皮膚が硬くなり、ときには胴体にまで広がる病気です。初めは顔や手の皮膚が硬くはれて、しわがなくなり、光沢をおびます。そのため、指は曲げにくくなり、顔は表情がなく、まるで仮面をかぶったようになります。しかし、発病するのはきわめてまれなケースといえます。
 膠原病のうち、これらの病気は、典型的な皮膚症状があるため、比較的診断の手がかりとなりやすいものです。
   
これら以外にも、皮膚に原因があるようにみえる症状が、内臓に疾患によってもたらされている場合が多々あります。実際に、皮膚科を受診したところ、初めて内臓に疾患が発見されることも少なくないのです。
 皮膚に何か異常を発見したら、早めに専門医を受診し、原因をつきとめておくことが大切です。


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