治る肝臓病・脂肪肝
   肝臓病の現代病といわれる「脂肪肝」は、お酒をよく飲む人や肥満・糖尿病における過剰栄養で簡単におこります。ウイルス性の肝臓病と違い、慢性化することはないものの、それは生活習慣病の前ぶれでもあるのです。
 食生活の改善や運動によって早めに改善することが重要です。

【健康診断を受けた人の約2割に脂肪肝】
   検診や会社の健康診断などで、肝機能障害を指摘されたことはありませんか。
 実は、ある健康診断の結果、約2割の人に「脂肪肝」が認められたといいます。男性では40歳前後、女性ではそれ以上の中高年者に多くみられ、近年増加傾向にある病気です。
 通常肝臓は、健康なときでも3〜5%の脂肪を含んでいるものですが、いろいろな原因により、肝細胞に中性脂肪が必要以上にたまると脂肪肝になります。
 ウイルス性の肝臓病などと違い、それ自体で肝臓の働きが著しく低下したり、慢性化することはありませんが、生活習慣病との関連も深く、見逃すことができない病気なのです。
   
【脂肪肝ができるわけ】
   肝臓の働きは大きく分けて、「解毒」「分泌」「代謝」という3つの機能をもっています。
 「解毒」は、アルコールやアンモニアなどの有害物質を分解し、無毒化する働きです。「分泌」は腸で消化液となる胆汁をつくる働きです。また「代謝」は、腸から吸収された栄養を体内でつくり変える働きで、これが脂肪肝に大きく関わってくるのです。
 例えば、食物として摂取されたバターや肉類の脂質は小腸で分解され、肝臓に運ばれていきます。そこで、コレステロールやリン脂質、中性脂肪といったさまざまな脂肪に合成され、今度は身体の各細胞へ運びだされていきます。
 しかし、過食や多量飲酒によって中性脂肪が多くつくられると、肝臓の外へ運びだす能力が落ち、肝臓に脂肪がたまって、脂肪肝が起こるのです。
 さらに肝臓に中性脂肪が蓄積しているということは、血液中の脂質も高く、動脈硬化や狭心症といった生活習慣病にかかりやすくなります。
   
【カロリーの摂り過ぎ、お酒の飲み過ぎに要注意】
 
   さて、肝臓で中性脂肪となる食物は、バターや肉類などの脂質だけではありません。ここが大切なところで、実は御飯やケーキ、和菓子に含まれる糖質やアルコールなども中性脂肪の元なのです。
 糖質は肝臓でグリコーゲンとして蓄えられ、本来なら必要に応じてエネルギー源となって使われていくのです。
 しかし、栄養のとり過ぎなどでグリコーゲンがあまってしまうと、中性脂肪になって蓄えられるようになるのです。特に、糖尿病の方はインスリンの働きは悪く、グリコーゲンをエネルギーに変える能力が低下しています。そのため、肝臓の脂肪蓄積を促すのです。
 また、中高年の方で、甘いものやでんぷん質ばかりを摂るようなバランスの悪い食事をしていたり、お酒をご飯がわりにしてしまう人がいます。そのような人は、脂肪肝が起こりやすいのです。
 特に、日本酒にして2.2合を毎日飲み続ければ、4週間ほどで脂肪肝になるといわれます。さらに何年も飲み続けていれば肝臓の組織そのものが傷つき、肝線維症やアルコール性肝炎、はては肝硬変へと移行してしまいます。普段から2〜3合の晩酌習慣のある人や、会社の付きあいでお酒を飲む機会が多い人は注意が必要です。
 このように、現在の日本では肥満や糖尿病による過剰栄養、多量飲酒による脂肪肝が多いのです。

  【検査と治療】
検査
   血液検査で肝機能の異常がみられれば、さらに詳しく超音波検査やCTスキャン、肝生検などが行われます。特に超音波検査は痛みもなく、簡単なうえに信頼性の高い検査で、病気の診断に大変役立ちます。モニターの画面に映しだされた脂肪肝は、肝細胞中に増えた球状の脂肪によって、キラキラと輝いてみえるので診断できます。
治療
◆食べすぎない◆
   脂肪肝の原因の多くは過剰栄養ですから、適正なカロリーとバランスのよい食事を心がけることが大切。
 特にアルコール性の脂肪肝の方なら、まず禁酒し、アルコールによって得ていたカロリーを食事から摂ることが大切です。禁酒と適正な食事療法で、1か月ほどで肝機能はもどります。
◆運動◆
   過剰な栄養は運動によって消費しましょう。歩く習慣をつけたり、まめに身体を動かすようにします。
◆肥満による脂肪肝では◆
   とにかく減量が必要で、適正体重にもっていくことです。肝臓病だからといって安静にしている必要はありません。無理な運動は逆効果ですから、かかりつけ医とよく相談し、運動療法を行いましょう。
◆糖尿病による脂肪肝では◆
   糖尿病の血糖コントロールが悪いと脂肪肝になりやすいので、糖尿病自体を治すことが先決です。

   脂肪肝は、努力次第で簡単に治りますし、慢性化することもほとんどありません。だからといって、放置していれば生活習慣病へとつながりますので、食生活が乱れていたり、肥満気味の方、お酒をよく飲むという方は定期的に健康診断を受け、肝臓の状態をチェックするようにしましょう。


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