つらい痛み・・・帯状疱疹!
 激しい痛みと、皮膚に小さな水ぶくれが現れる帯状疱疹は、早期に適切な治療を受ければ恐れる病気ではありません。しかし、高齢者の方や重症の場合には、重い合併症を引き起こす危険性もはらんでいるのです。
 
 帯状疱疹は、水ぼうそうと同じ
水痘・帯状疱疹ウイルス(vzウイルス)によって引き起こされます。
 このウイルスに初めて感染した状態を
水ぼうそうといいますが、水ぼうそうが治って症状は消えても、ウイルス自体が死滅したわけではありません。神経の中に潜み、暴れだす機会を虎視眈々とうかがっているのです。
 そして睡眠不足やハードな仕事が続いて体力が落ちたとき、また年をとったり病気などで免疫力が低下した人などに、帯状疱疹として再び現れてくるのです。
  帯状疱疹の症状と経過
  帯状疱疹は、ある日、身体の一部にピリピリチクチクするような痛みを覚えることで始まります。
 痛みが数日から1週間続いたころ、虫に刺されたような赤い班点ができ、それがみるみるうちに水ぶくれになっていきます。
 身体に帯状に広がった水ぶくれは、やがれ膿をもち、1週間ほどで破れて、ただれや潰瘍ができます。さらに1週間ほどでかさぶたになり、発症後3〜4週間で治癒するという経過をたどります。一般的には、皮膚症状が治まるのと同じぐらいに、痛みもなくなっていきます。
 しかしなかには症状が重く、後遺症として神経痛が残る場合もあり、これを
帯状疱疹後神経痛といいます。
 帯状疱疹の症状がでやすいのは、水ぼうそうにかかったとき発疹がでた部位です。なかでも多いのが、三叉神経の第1枝がある額からまぶた、鼻の辺りと、胸椎神経のあるわきの下から胸・腹にかけてというパターンです。
 発疹が帯状に広がるのは、ウイルスが潜んでいた神経の走行に沿っているためです。また身体の左右どちらか片側だけにでるのが特徴です。
 
  帯状疱疹の治療法
 vzウイルスは神経を破壊しながら増殖するため、ときとして激痛を引き起こします。耐え難い痛みがあったり、皮膚症状がひどい場合は、帯状疱疹後神経痛に移行する危険性があるため注意が必要です。
 これを防ぐには、通常、皮膚症状が現れてから3三日以内に適切な治療を開始しなければなりません。異常を感じたら放置せず、すぐに皮膚科で専門医の診察を受けましょう。

1)抗ウイルス薬・・・抗ウイルス薬は、軟膏、内服薬、点滴などさまざまなタイプがあります。症状に応じて使い分けますが、できるだけ早期に治療を開始すれば重症化を防ぐことができ、帯状疱疹後神経痛の予防にもなります。
 抗ウイルス薬はすぐれた薬ですが、腎臓の機能が低下している人には不向きです。

2)消炎鎮痛剤・・・抗ウイルス薬でも痛みが抑えられない場合は、非ステロイド系の消炎鎮痛剤が用いられることがあります。
 また、皮膚のただれた部分や潰瘍部分から細菌感染を起こした場合は、抗生物質が使われることもあります。

3)神経ブロック療法・・・発症当初から激痛がある、高齢で免疫力が落ちているなど、重症化が予想される場合は、痛みを抑え治癒を促進するために、神経ブロック療法が行われます。
 これは、神経や神経節に直接、局所麻酔薬などを注射することにより、痛みが脳に伝わる経路を遮断しようという治療法です。発症から2週間以内に神経ブロック療法を行なえば、帯状疱疹後神経痛を90%予防できるといわれます。
 ただし、1回の注入による効果の持続時間がそれほど長くないため、高齢者では3週間から1か月程度の入院が必要な場合もあります。
 この治療法は、麻酔科やペインクリニックで行っています。
   
帯状疱疹後神経痛
 若い人が帯状疱疹にかかっても、ほとんどの場合、皮膚症状が落ち着くのと同時に痛みは治まります。
 しかし重症の場合や高齢者では、皮膚症状が消えた後もしつこい痛みだけが残る場合があり、これを帯状疱疹後神経痛といいます。
 高齢にまるほどでやすく、60代の60%、70代の70%が帯状疱疹後神経痛に移行するといわれます。痛みがある場所をさわってみると、感覚が鈍い感じ(知覚鈍麻)があります。
 なぜこうした神経痛が残るのか、原因はよくわかっていません。神経の損傷部分が広範囲にわたり修復が困難なため、脳に痛みの記憶が残るため、神経を修復するときに脊髄が異常興奮するため、などさまざまな説があります。
 治療としては、前出の神経ブロック療法が代表的ですが、発症から6か月以上過ぎてしまうと充分な効果が期待できません。近頃では
イオンフォレーシス療法を行なう皮膚科や麻酔科が増えています。
 これは、微弱な電流を使って麻酔剤やステロイド剤を”イオン化”し皮膚から吸収されやすい状態にした治療法です。1回の治療時間は薬30分で、痛みもほとんどなく、比較的高い効果が持続します。
 また、抗うつ剤もよく用いられる薬剤の1つです。とくに皮膚の深部に痛みがある人に効果を発揮します。薬の量としては、うつ病の治療に使用するより少なくてすみます。
  その他の合併症
 それ以外にも、さまざまな合併症が起きる場合があります。
ハント症候群・・・耳に帯状疱疹ができると、めまい、難聴、顔面神経麻痺、味覚障害等の後遺症が残ることがあります。
運動麻痺・・・強い炎症により運動神経が侵されると、身体に麻痺が残る場合があります。最も多いのが腕です。
目の合併症・・・目の虹彩の神経とつながっている鼻の頭に発疹がでると、虹彩炎や角膜炎起こす場合があります。
  基本的に帯状疱疹は、一生に一度だけ罹患する病気です「抵抗力が落ちて弱っているよ」という身体からの警告サインなのです。疑わしい症状が認められたら、早めに受診し、充分休養をとって体力を回復させるように努めましょう。


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