東京都における災害医療対策について
石原 哲先生(東京都医師会 救急委員会委員長)
東京都での医療救護活動は、自衛隊の医療班・日赤の医療班といえども、東京都医師会の指揮命令系統の中に入ることに決まっている。また、45の地区医師会があり災害出動班として各医師会2班ずつの割り当てを行なう。
そして、災害医療に対する意識・意気を高めるため、ユニフォームの作製が重要である。
(赤:医師、緑:看護師、黄:事務)
東京都は世界で一番大規模災害が起る可能性が高く、災害医療の充実を急務とする地域である。そのために「各種マニュアル」を作成し、そのマニュアルを徹底周知させる必要がある。
災害医療救護に係る各種マニュアル
1. 災害時医療救護活動マニュアル(別冊)医療救護活動マップ
災害時医療救護活動に係る関係機関名簿
H8年3月
H9年8月
2. 病院における防災訓練マニュアル H8年8月
3. 病院の施設・設備自己点検チェックリスト H8年8月
H12年3月改訂
4. 災害時医療救護活動マニュアル(区市町村編) H8年11月
5. 災害時における検視・検案活動等に関する共通指針(マニュアル) H9年3月
6. 災害時における検案活動の実務 H9年6月
7. 災害時歯科医療救護マニュアル H9年3月
8. 災害時における避難所等の衛生管理マニュアル H9年5月
9. 災害時における透析医療活動マニュアル H9年8月
H13年3月改訂
10. 医薬品・医療資器材等の新たな備蓄・供給体制 H10年3月
11. 災害時における保健所活動マニュアル H10年5月
12. 災害時における薬剤師班活動マニュアル H13年2月
13. 衛生局(現:福祉保健局)災害活動マニュアル H10年8月
H15年7月改訂
14. 災害時の歯科医療救護活動における身元確認班
(歯科医師班)研修テキスト(歯科医療救護班向け)
H11年11月
15. 健康危機管理マニュアル H12年4月
16. 災害時の医療救護活動とトリアージ(医療機関、医療救護班用) H8年9月
H15年7月改訂
都民向け資料
1. 災害時の応急手当【リーフレット】 H8年8月
2. 災害時の医療救護活動とトリアージ【ビデオ】 H9年3月
東京都防災訓練事業実績
年度 防災訓練日・訓練名 参加
人数
医師・
歯科医
想定
患者
特記事項 七都県市合同防災訓練
8 8/31〜9/1:都・足立区合同
11/21:都・大島町合同噴火災害
17,600
8,713
14
4
50 8/31夜間訓練 第17回:川崎市
9 8/31〜9/1:都・立川市合同 16,000 16 58 8/31夜間訓練 第18回:横浜市
10 8/31〜9/1:都・渋谷区合同
11/21:都・八丈島合同噴火災害
10,100
6,200
31
8
70
60
8/31夜間訓練 第19回:千葉市
(悪天候中止)
11 9/1:都・七都県市 7,632 35 360   第20回:東京都
12 9/3:都総合(銀座・晴海)
都・三宅島村合同噴火災害
(噴火により中止)
24,767 57 112 ビッグレスキュー
東京2000
第21回:横浜市
13 9/1:都総合 15,087 68 286 ビッグレスキュー
東京2001
第22回:川崎市
14 9/1:都・練馬区合同
11/21都・大島町合同噴火災害
13,475
6,310
38
6
206
50
  第23回:千葉県
15 9/1:都・日野市合同 28,500 63 200 STARTトリアージ訓練
NBC訓練
第24回:埼玉県
16 9/1:都・台東.墨田.荒川     200 東京DMAT訓練  
17 9/1:都・町田市合同     200 東京DMAT訓練
搬送トリアージ訓練
 
福祉保健局が実施した特色ある防災訓練:夜間・広域搬送・透析医療救護・水路搬送・NBC災害対応・瓦礫の下医療
東京都の災害時医療計画
災害時医療活動をマニュアル化
医療救護班派遣要請の協定では地区医師会独自の判断で出動が可能とした。
医師会のみならず歯科医師会、薬剤師会との連携を重視した。
被災地内で医療の継続が可能な場合は、すべて医療救護所とみなし、医療救護班や医薬品の供給の依頼が出来る。
入院患者さんも医療制約者として被災者とみなし、後方搬送対象とする。
東京都には45の地区医師会があり災害出動班として各医師会2班ずつの割り当てを行っている(東京都の大学医師会の出動班は別途組織している)
東京都内における災害時の医療救護活動は自衛隊の医療班・日赤の医療班といえども東京都医師会の指揮命令系統の中に入ることを周知徹底している
都における医薬品・医療資器材の備蓄整備状況(平成17年3月31日現在)
品 名 数 量 備蓄場所 対応人員
災害用救急医療資器材
(7点セット)
88セット 災害対策職員住宅柏木住宅内集中備蓄倉庫 10セット
立川地域防災センター内集中備蓄倉庫 10セット
都立駒込病院 05セット
東京都災害拠点病院 63セット
44,000人分
現場携行用医療資器材 63セット 東京都災害拠点病院 63セット 189人分
セルフケアケアセット
(救急箱)
169セット 都立学校 63セット
都営12号線災害備蓄倉庫 5セット
84,500人分
単品補充用医薬品   立川地域防災センター内集中備蓄倉庫 10,400人分
板橋区若木原公園内倉庫 17,500人分
大田区田園調布南倉庫 8,400人分
大田区南六郷倉庫 25,200人分
白鬚東防災拠点備蓄倉庫 12,500人分
74,000人分
合 計     202,689人分
東京都災害拠点病院応急用資器材の備蓄状況
品名 規格 数量 (立川地域防災センター内
集中備蓄倉庫)
(災害対策職員
住宅柏木住宅内
集中備蓄倉庫)
煮沸消毒用機器 鍋・補助燃料 150個 75個 75個
非常食 1セット60食分 500セット 250セット 250セット
テント 2間×3間 120張 60張 60張
ベット兼担架   150台 75台 75台
毛布   4,500枚 2,000枚 2,500枚
空気枕   4,500個 2,400個 2,100個
ガードル台   2,100台 1,100台 1,000台
洗面器   300面 150面 150面
タオル   6,000枚 3,000枚 3,000枚
非常用キャンドル 補充用ろうそく6本 750個 390個 360個
組立式簡易トイレ   90個 50個 40個
地区医師会・災害拠点病院・東京DMAT現場携行用資器材
トリアージ講習会実績一覧
平成14年度・・・受講者数  590名
平成15年度・・・受講者数  865名
平成16年度・・・受講者数 1371名
平成17年度・・・受講者数  650名    (平成17年10月31日現在)
10/27 小千谷市医師会員召集、協議開始。日赤チームとの協議もスタート。小千谷市会員は小千谷市に専念し、川口町は魚沼市会員にまかせることとなった。以後、小千谷では多くの問題に対処することになる。
※平成8年度から13年度までの実績は、8,599名
東京都災害拠点病院
広域基幹災害医療センター:都立広尾病院・独立行政法人東京災害医療センター
地域災害拠点中核病院 12病院(各医療圏に一箇所):日本医科大学付属病院・東邦大学医学部付属大森病院
都立広尾病院・東京医科大学病院・帝京大学医学部付属病院・東京女子医科大学付属第二病院
都立墨東病院・青梅市立総合病院・東京医科大学八王子医療センター・独立行政法人東京災害医療センター
都立府中病院・公立昭和病院
地域災害拠点病院 63病院(2007年までに70病院へ)
東京都二次救急指定病院
災害時墨田区医療機関連携(案)
都立墨東病院(3次救急病院)―白髭橋病院(拠点病院) 東京都リハビリテーション病院(災害時搬送患者待機病院)
  中林産婦人科病院(専門病院)
―地域2次救急医療機関―救急告示病院―一般医療機関
東京の特殊性〈災害多様化(災害進化)の背景〉 1996.11 ICRC(国際赤十字連盟)年次報告書より
都市化と人口過密化
交通の過密化
交通の高速化と多様同乗化
地下の交通利用と商業化
建物の高層化
工場と住宅の混在化
<報告書の締めくくり>社会が災害対策にどこまで投資できるかがその国の社会の成熟度を示す
地下鉄サリン事件(1995/3/20)
  営団地下鉄日比谷、千代田、丸ノ内線各線の5本の地下鉄車内で猛毒のサリンが使用された。
この無差別テロで乗客・駅員等12人が死亡、5311人が中毒の被害を受けた。
聖路加国際病院に640人搬送・・一カ所集中は災害医療では有り得ない。
看護婦に二次災害・・できうる限り避けねばばらない。
 サリン防止法制定 新たなNBC対策の必要性
地震想定:東京都は区部直下、多摩直下、神奈川県境、埼玉県境の四つの震源を想定して、M7の地震が起こった場合の被害を試算している(死者7300人を想定) 関東大震災から80年が経過した現在、活動期に入ったことを前提にした防災対策が求められる。
東京都災害テキストについて(H8年度版)
1995年阪神淡路大震災後に、都市を襲う直下型地震に対して、その当時の時点での災害想定の下に作成された
テキストではトリアージ実施者の力量に依存しすぎ、かつ、実施者の法的問題も未整理
その後、NBC対策など新たな対策の必要性も生じた
テキスト改訂:START方式の採用、被災地への航空機を利用した広域搬送の基準、NBC対策の紹介、トリアージをめぐる法的問題
災害対策本部の機能
CSCA       TTT    
- Command 指揮命令     Triage トリアージ
- Safety 安全     Treatment 治療
- Communication 情報伝達     Transportation 搬送
- Assessment 評価        
トリアージ実施上の指揮・命令体制
簡潔な情報伝達の重要性  例)英国では METHANE(メタン)
M: My call-sign or name・・・・・・・・・・・・・・・・(自分の名前)
E: Exact location・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(正確な場所)
T: Type of incident・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(災害の種類)
H: Hazards, present or potential・・・・・・・(災害がすでに発生しているのか・発生の可能性があるだけか)
A: Access to scene・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(現場への交通)
N: Number and severity of casualties・・・・・(被害者の数と重症度)
E: Emergency service, present and required(救急車が到着しているか・救急車が必要か)
東京DMAT
DMAT:Disaster Medical Assistance Team(災害医療派遣チーム)
東京都の医療救護班は応急救護所に執務
DMATは、被災現場での治療・救命措置・トリアージなどを行う
東京消防庁災害救急情報センター・東京都福祉保健局・東京DMAT計画運営検討委員会
→東京DMAT本部へ出動要請→東京消防庁DMAT連携隊・東京DMAT指定病院で隊員と合流、現地へ出動
「東京DMAT」指定病院:東京災害医療センター・日医大付属病院・杏林大付属病院・帝京大学附属病院
都立広尾・墨東・府中病院・東京都医師会 白鬚橋病院・昭和大学医学部附属病院・東京医大八王子医療センター
東京女子医大第二病院・青梅市立総合病院・東京医科大学病院
新潟県中越地震医療チーム派遣人員数:東京都から410名
新潟県中越地震東京DMAT出動:
10月23日   夜間、東京DMAT設立検討運営委員会辺見委員長から東京DMATの出動喚起があり、隊員自主的待機
10月24日 13:10 新潟県から東京都総合防災本部へ出動要請:震源地の小千谷市に隣接する小国町にて診療所の医療支援及び避難所での医療救護活動
  13:50 立川陸上自衛隊基地にDMAT集合し、14:00自衛隊ヘリ3機に分乗し15:40 渋海小学校校庭に着陸
  15:50 小国町震災対策本部到着、報告及び活動内容打ち合わせ後、16:30 DMATチームを分散し、診療所及び各避難所の医療救護活動開始
   
1. 避難所での被災者の診察・処置
2. 町の連絡体制の整備
3. 傷病者情報の充実
4. 避難所での衛生環境整備
5. 診療所の支援
6. 診療が継続できる体制作り
白山臨時ヘリポート・・山古志村住民の避難
新潟県・宮城県への出動時の問題点
比較的狭い範囲での災害であったため派遣チームが小規模で済んだがさらに大きな災害に対しては東京都医師会としてより組織立った派遣体制が必要と考える
東京DMATの出動体制をよりスムーズにする必要があると考える
考察
全日病・MeRUとの日々の連携体制が早期の出動につながった
東京都医師会の会長はじめ担当理事の災害に対する意識が重要であった
他団体(日赤・大学病院等)との連携がスムーズであったことは医療救護活動のレベルが向上した結果の現われであったと考えられた
医師・看護師等は入れ替わったが、一貫したコーディネーターとして事務職の配置は重要であった
動きが早いNGOからGOへ移行された今回の活動は今後とも有効な手段と考えられた
被災者の皆様や新潟県医師会の受け入れが協力的であったのは新潟県民気質も大いに関与していたものと考えられる

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