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医師会からのお知らせ

第27回健康と医療作文コンクール

佳作

「感動ばかりの病院生活」
平賀 紗羅
北杜高校1年
私は高校に入ってすぐ部活で怪我をして入院する事になった。入院している間に沢山の感動をした。
病院側の関係で私は産婦人科の病棟で入院する事になった。もちろん周りはお母さんばかりで高校生は居なかった。同年代が居なくて退屈だなとずっと思っていた。ある日、車椅子で廊下を通った時、赤ちゃんの泣き声がしたので目を向けると生まれたばかりの赤ちゃんが、お母さんに抱かれて多くの看護師さんに囲まれていた。話を聞くと皆笑顔で嬉しそうだった。同じ部屋の人達は頭痛や腹痛、気持ちの面で苦しんでいる人がほとんどだった。同じ空間に居たからこそ不安や緊張感が伝わってきた。そんな時、ふと自分が生まれる時も母はこんなに苦労をして産んでくれたのかと思い、ありがたく思った。辛い思いをしたからこそ産まれてきた時、涙を流しながらお母さん達は感動して喜ぶのだなと思った。同じ部屋の人が出産をして赤ちゃんを見るとなんだか私まで嬉しくなり感動してしまった。普段じゃあ絶対体験出来ないし、こんな感情にはならないと思い、退院する時には産婦人科で良かったなと思うようになっていた。
退院してから約一ヵ月。私は再入院になった。今度は怪我をした人達が集まる整形外科に入院する事になった。今回も同年代が全くいなく、おばあちゃんや大人ばかりだった。同じ部屋は89才のおばあちゃんが居た。最初はお年寄りの方とどう接して良いか分からなかった。そう思っていた時優しく「高校生?」と聞かれた。それからたまに話しをするくらいの仲になった。私が歯を磨いていたらおばあちゃんが急に、「若い子は良いねぇ。年をとると早く死にたいよ。」と笑いながら話しかけてきた。年をとると早く死にたくなるのかと思うと少し悲しくなり何を言えば良いか分からず黙っていると突然「親孝行って言うもんはね、何かしてあげる事よりも心配をかけない事が一番」と言ってくれた。私はその言葉の通りだなと人生の大先輩からのアドバイスが嬉しくてしょうがなかった。それからもおばあちゃんは今まで人生で辛かった事、戦争の時の話、大好きな孫や家族の話を沢山お話しをしてくれた。自分の話だけではなく私の話もしっかり聞いてくれた。人生話を聞いているだけで元気をもらい、これから色々な事を私も経験するんだろうなと思い、将来が楽しみになった。話に夢中になった私は30分以上ハブラシを咥えていた。その日の夜は中々寝られずにいた。そうするとおばあちゃんが寝言で「頑張れ。頑張れ。」「いつもありがとねぇ。」など、家族の事を夢見ているんだろうなと思った。話を聞いている時から思っていたが、人生長く生きてきたおばあちゃんは本当に人の気持ちを理解して、常に気配りを欠かさず心から相手の事を思いやれる優しい方だなと感じた。話の全てに説得力があり勇気付けられるすごい力を持っているなと思った。
学校の友達からは沢山の応援メッセージをもらった。私は良い友達を持ったなと思い、文を読んでいる時涙が出そうなくらい感動した。毎日が退屈で辛い入院生活になると思っていたけど、沢山の人と出会ってその人の優しさを知って沢山感動を与えてくれた。皆に感謝したいと強く思った。これから私は人生まだまだ知らない事ばかりで壁にぶつかりそうな時もあると思う。そんな時には今まで出会った方々が教えてくれた事を生かし、あのおばあちゃんのような方になりたいと思う。いつからか私はおばあちゃんの事をヒーローのような存在だと思うようになった。私も誰かに感動を与えられる素敵な大人になりたいと思う。
この作文を書いている今も私はおばあちゃん達と共に入院をしている。明日はどんな話をして感動を与えてくれるのか楽しみだ。