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医師会からのお知らせ

第26回健康と医療作文コンクール

優秀賞

「昔の私、今の私」
矢崎 唯
山梨高校2年
私は、昔から病気を持っています。その病気の名前は、成長ホルモン分泌不全性低身長症という名前です。昔から身長が低く同級生や上級生、ましてや下級生にまで身長が低いことをばかにされていました。
小学2年生の時、縄跳びの練習がしたかった私は、ジャンプ台というものの列に並んでいました。すると、小学6年生の男子が「チビなんだから、ジャンプ台を使うなよ、床でやれ。」と大きい声で、私が使っている最中に言ってきました。当時の私は、恥ずかしくて悲しかったのですぐ中断して、その場から離れたところで泣きました。一緒にいた友達は「やらないの。」と声を掛けてくれましたが、私は、友達の顔が見られず、顔をそむけたまま「やらない。」と答えました。私は、この日を境にジャンプ台を使うのが怖くなってしまいました。この時、一緒にいた友達は、身長が高く、いつも、うらやましいと思っていました。幼い頃からずっと“チビ”“身長低い”など言われ続けていた私は、言われる度に傷付いていました。みんなの前では言われても必死に笑顔を作って一人でいるときは、隠れて泣いていたことを今でも思い出します。どうしてこんな体で生まれてきたんだろう。なんでこんなに身長が伸びないんだろう。と自分に問いかけていた日々に、ある日、母がこう言いました。「ちゃんと生んであげられなくてごめんね、でも、あなたが何を言われようとあなたの味方だから、そんなの気にしなくていいんだよ。」と。私は、母の言葉を聞いて泣き出し、また、母も泣きました。なぜ母に謝らせてしまったのか、私は、身長が小さいだけで、他の病気はなく健康なのに、ぜいたくを言ってはいけないとこの時思いました。
そして、入院をして、退院した日から毎日足に注射をすることになりました。その時まで、足になんて打ったことのなかった私は、とても、怖かったです。しかも、自分の手で打たなければならない、このことが当時の私にとって、一番恐怖でした。でも、自分が嫌な思いをして、母にも嫌な思いにはさせたくなかったので、その日から毎日しっかり打っていました。打ち始めたら、だんだん身長も伸び、平均の身長でもないし、まだまだ小さいけど、自分の中では満足しています。
今の私は、“チビ”と言われることがうれしく感じます。なぜなら、それで話したことがない人とでも話せる機会ができたからです。全く気にせず、私自身を受け入れてくれる人たちが今、私の周りにたくさんいます。それだけで幸せを感じています。
注射を打ちながら医療はすごいなと思いました。なぜなら、打ったことにより身長も伸びたし、私と同じ悩みを抱えた人も解決できている人が大勢いたからです。もし、この注射がなかったら、私は、今頃どうなっていたのでしょうか、どのくらいの身長なのかということを時々考えています。この、治療を考えてくれた方に、とても感謝しています。そして、母にも感謝しています。なぜなら、身長が低いということだけで、命に関わるような病気もなく、健康で生んでくれたからです。もし、他の病気を持っていたら、きっと私は健康に暮らせていなかったと思います。
あの日、言われたことが一番辛かったけど強くなれたきっかけでもあります。昔の私がいるから今の私がいます。今も毎日、注射を打っています。健康に産んでくれた母、身長が低い私を受け入れてくれた人たちに感謝して健康に過ごしていき、また、私と同じ病気を持った人たちも健康で幸せに過ごしてほしいと思いました。