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医師会からのお知らせ

第26回健康と医療作文コンクール

山梨県医師会長賞

「医療で大切なこと」
廣岡 修作
甲陵中学校1年
医療はこの瞬間にも目まぐるしく発展している。毎年のように新しい事実が発見され難病の治療もだんだんと可能になってきた。こんな時代だからこそ大切にすべきことと聞かれたら、何と答えるだろうか。私は地域に密着した診療所や病院と答える。これはいつの時代でも言えることではないだろうか。
もしも医療用ロボットができたとする。医者の代わりになって、その患者に最適な判断を人工知能が下し、治療を行う。こんなロボットが現実にいてくれるのであれば、多くの人が拍手で迎えることだろう。しかし私は考えることができない。病気の時に見てもらう診療所のお医者さんの席に金属ボディーのロボットが座っているところが。
先日私は右手の中指をドアに挟んでしまった。指先に血が滲み、ずきずきと痛みがある指を抑えながら診察室に呼ばれるまでの時間は、とても不安だった。その不安を和らげてくれたのが診療所の先生だった。どのようなケガなのか、とても丁寧に教えてくださっただけではなく、近くの場所の話や部活動の話をしてくださった。本当に小さな心遣いだったのかもしれないが、その時の私にとっては大きな励ましだった。このことはどれほど優秀なロボットでもできないのではないのだろうか。
私の住んでいるところは、山梨県北杜市清里である。私がまだ保育園に通っているころは、清里には多くの人が頼りにする診療所と薬局があった。突然、診療所の先生が亡くなったことで、診療所はなくなった。優しい先生で、だれにも好かれていた。何より大きかったのは、清里について多くのことを知っていた点ではないだろうか。清里のどこどこのおばあさんというところまでわかっていて、みんながどんな願いを持っているかまで知っていた。ここまで地域とつながりを持っていたお医者さんを私は知らない。
医療の課題の中で最も重要なものは、最近ラジオなどでとり上げられている医師不足だと私は考える。これからの医療技術は100%良いものになっていくだろう。しかしいくら医療機器が発展しても、診察する医師がいなくては意味がない。東京などの都市には1ブロックに一軒医院があるような所もある。その一方で清里のような地域もある。私は何をすれば良いのかも、どういう意味で都市に医師が集まるのかもわからない。でも一つだけ私にもわかることがある。地方では医師が大切な存在であり、必要としている人が必ずいるということである。
私の近所に住んでいる80代のおじいさんもその一人である。おじいさんは足が悪く、頻繁に病院に通うそうだ。しかしその病院はおじいさんの家から20キロメートル以上離れていて、おじいさんは毎回一人で自動車を運転していかなくてはならない。病院が地元の清里にあれば、こんなに苦労しなくて済むのではないだろうか。
医療の話になったときに考えることがある。医療で最も患者さんの効薬となるものは何なんだろうと。私の父がこう言っていた。「風邪をひいて病院に行くと診察の間の待ち時間に看護師さんと話しているうちに、なおっちゃうんだよね。」たぶんそうなのであろう。どれだけ機械が発展しても、医療技術が発達しても、お医者さんや看護師さんの代わりになるものはないはずである。
私の夢は医師になること、清里で活躍できる医師になることである。私が医師になるころには、さらに医学が発展していると思う。ロボットや人工知能も発展していることだろう。どんなことになっていても、人間の医師しかできないパフォーマンスをしていきたいと思う。地域に密着した診療所や病院などの医療施設が、地方でも過疎地域であってもある必要があると思う。これからも、ニュースで医療について知りながら、清里や地方の医療について考えていきたい。