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医師会からのお知らせ

第25回健康と医療作文コンクール

佳作

「病と共に」
小泉 節子
甲府市
人生の最終章での願いは、健康で長生きをしたい、と言うことでしょうか。
夫88才、妻81才。今、その願いと裏腹に夫は病み、妻はその介護の為に日々一生懸命に生きている。どんな人だって若い時には無我夢中で働き、年老いては悠々自適の生き方を望んでいると思う。でも、誰もがみんなそんなに上手くはいかない。
私達夫婦も夫は大病をし、私もいくつもの病を抱えながら、夫の介護のために、時間を費やし、二人三脚で老いの道を歩きつづけている。
夫は医者に「あんたは生命力がある人だね。」と励まされて、生きようとする元気をもらい。私は夫の弱音を吐かないがんばりに接し、私も笑顔と勇気をもらい、今を生きている。
ある時、無口の夫が突然「お前の助けで、俺は生きている。」とつぶやき、私は驚いた。自分が大変な体なのに妻である私に気使いをして。…
「そんなこと当たり前のことだからね。」と私は急いで言葉を返しました。
そして涙が出そうになり、「病は人を育てる」とその時に思った。
私はいっぱい、いっぱいの「ありがとう。」を夫からもらい、もっともっと「ありがとう。」の言葉を聞きたくて日々介護にがんばっている。多くの人々が健康でいる為に毎日努力をしているけれど、どこからか病気が侵入して人間を倒そうとする。急いで病院に行き、薬を飲み、栄養のある食物をとり、健康になりたいと思う。
体の健康と心のそれとは、一心同体であり、夫の病は、病院を受診し、デイサービスで楽しい一時を過し、訪問介護での体調をみてもらい、楽しい会話などで病の進行はストップしており、明るい毎日を送ることが出来ている。
妻である私は夫のデイに行く日には、家から外に出て、思いっきり外の空気を吸って、山を眺めたり、青い空や頭上にのびる飛行機雲を追いかけたり、若い頃学んだ油彩で、絵筆にタップリ絵の具をつけて、すばらしい風景を描いてみたくなる。今は無理だけど、いつかはもう一度筆を持ってみたい。
また、行きつけのスーパーには新鮮な野菜が並び、夫の大好きなフルーツが目に入る。介護疲れにはショッピングが一番の薬かと思う。
夫がデイから帰った夜は、特に2人の会話は弾みます。夫の昼食のメニューから始まって、大好きなお風呂に入ったこと、楽しいコーラスのことなど、話は尽きない。
いっぱい笑い合いながら、今、真夜中であることを忘れてしまうほどだ。
小さい家に2人で住んで、若い頃は子供達の為にがんばって働き、定年退職後は、あれもしよう。これもやってもようと話し合って夢を膨らませて来たのに、神様はいじ悪だなあと思ってしまう。
でも、毎日の生活の中に笑いがあり、楽しく暮らしていけることは幸せなことだと思っている。
寿命が尽きるまでは、ゆっくりと生きていきたい。
「長生きの秘訣は、よく食べ、よく笑い、沢山考えること。」
そんなことを今、つくづく思っている。