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医師会からのお知らせ

第24回ふれあい医療作文コンクール

優秀賞

「温かい医療」
輿石 晃大
駿台甲府中学校2年
現在、医療技術は日々驚くほど進歩しています。先日私は、ロボットが人間の手術をするという新聞記事を読みました。とても難しい手術を、ロボットがいとも簡単に行うことに大きな衝撃を受けました。今後は、人工知能やより精密なロボット、機械が登場し、今よりもずっと正確でミスの少ない医療現場になっていくであろうことが容易に想像できます。「医療」という人の命に関わる分野において、正確さはとても重要な要素です。しかし、単に正確性のみを追求していくことが医療の発展につながるとは一概には言えないのではないでしょうか。技術の発達がめざましい今日だからこそ、改めて「温かい医療」の重要性というものを考えなければならないと思います。
私がこのように考える理由は、私の祖父の経験があるからです。
私の祖父は、肝臓がんで、入退院を繰り返しました。カテーテルを使う小さな手術から、何時間にも及ぶ大きな手術まで何回も行い、手術をする度に入院をしました。先生は、祖父の体にがんが見つかると、ていねいに調べ、しっかりと説明をしてくれました。がんという大きな病気を患い動揺する祖父や私たち家族に対し先生は、真剣に向き合い、私たちの心配や不安が少しでも軽くなるようにと優しく、私たちが納得するまで何度も説明してくれました。そうすることによって、先生との間に信頼関係が生まれ、祖父を含めた家族全員が安心感を持って手術の日を迎えることができていたのだと思います。
また、入院生活が長期間になると、患者も、患者に付き添う家族も疲れてしまいます。祖父の場合もそうでした。そんなとき、看護師さんはいつも笑顔で励ましの言葉をかけてくれたり、細やかな心配りをしてくれました。看護師さんのていねいな対応は、患者とその家族にとってとても大きな救いになります。私が特に忘れられないのは、祖父が何も食べられなくなって、水さえも飲めなくなってしまった時のことです。しゃべることの出来ない祖父が口の渇きを訴えたとき、家族はどうしてあげることもできずに困っていました。すると、担当の看護師さんが、のどにつまらないように小さく小さく氷をくだいて、それを自分の指にのせ、祖父の口の中に入れて食べさせてくれたのです。嬉しそうにする祖父に、優しい言葉をかけてくれた看護師さん。そばで見ていた私たちも、とても嬉しくなったと同時に、感謝の気持ちでいっぱいになりました。
その後、間もなく祖父は亡くなってしまいましたが、優しい先生方や看護師さんに対応してもらえた祖父は、病気になってから苦しいことの方が多かったであろうに前向きに生き抜くことが出来たのではないかと思います。亡くなる直前に「ここは優しい先生や看護師さんばかりで本当に良かった。」と話していた祖父の笑顔は、今でも私の脳裏に焼き付いています。病気にかかったとき、私たちはとても不安になります。病気になった本人だけでなく、その家族みんなが不安になります。病気についての知識の少なさや将来についてなど、あらゆることがマイナスの感情となって私たちに降りかかってきます。しかしそんなとき、病院の先生がていねいに診察してくれたり、真剣に説明してくれたりすると、不安は少しずつ和らいでいきます。また、看護師さんが優しく対応してくれたり、笑顔で励ましてくれると、それは患者とその家族にとって、とても救いになります。祖父を看てくださった病院の方々について考えてみて私は、改めてこのことに気が付きました。もちろん技術的な面では、人間は機械に敵わないことが多いでしょう。しかし、無機質な機械ではどうしても救えないこともまた、たくさんあるのです。先生や看護師さんが、苦しいときに手を握って励ましてくれたり、背中をさすり続けてくれたことが、祖父にとってはどんな先端技術を駆使した治療よりも効き目のある「手当て」だったのは疑いようがありません。人を心も含めて救ってくれるのは、結局は人だということを忘れてはいけないと思います。そして、そんな温かい医療がこれからも私たちの身近にあり続けてくれることを、心から願っています。