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医師会からのお知らせ

第22回ふれあい医療作文コンクール

佳作
「A先生との出会い」
齊藤 紘也
白根東小学校5年
オレンジのにおいがした。そのことは、はっきり今でも覚えている。ますいのにおいだった。
1年生のころに人の病気を治す仕事を知り、医師になりたいと思った。いろいろある医師の仕事でぼくは、眼科医になりたいと思う。
眼科医になろうと思ったきっかけは、1ヵ月に1回東京から山梨の眼科医院に来てくれているA先生との出会いだ。先生はそのときに右目をかくしたり左目をかくしたりするだけですぐに悪い所を見つけてしまう。まるで魔法みたいだ。
ぼくは1年生のころに斜視の手術をした。A先生に
「このままでは両目で見る機能がなくなり、立体的に物を見ることができなくなるよ。」と言われたのだ。東京タワーに近いB医大というところで手術をした。
手術の日、兄も同じ手術をした。ぼくは、兄の後だった。部屋で待っていると、手術を終えた兄が出てきた。寝たままだった。両目に白い眼帯がしてあった。点滴もしていた。
A先生が、
「ゆうやくんの手術は成功しました。」
と言ったけど、ぼくの想像していたよりもいろいろな器具をつけていてびっくりした。
A先生に
「紘也くん行きましょう。」
と言われた。いよいよぼくの番だ。兄も成功したからぼくも行ってやると気合いを入れた。
初めて入った手術室。そこには手術台があって、たくさんの人がいた。最初は、なんでこんなに人がいるんだろうと思った。けれど、あとになって考えてみればぼくの手術のために、たくさんの人たちが働いてくれていたこと、だからぼくの手術は行え、無事、成功したんだということに気づき、
「先生たちありがとう。」
という気持ちでいっぱいになった。
手術が終わったら、ベッドの中にいた。その日は、眼帯をしていて何も見えなかった。目を開けても何も見えなかったので寝ていた。
次の日に、眼帯をとって検査をした。夜には目をこすらないようにうでに器具をつけた。うでが曲がらなくて、気持ち悪かった。
手術の後、看護師さんは血圧をはかる時も、気をつかってくれた。
「始めるよ。」とか、
「終わったよ。」
と話しかけてくれた。そして、プレイルーム(遊ぶ部屋)に呼んでくれた。中を見るまではどんなふうなのかドキドキしたけれど、入るとぼくはあっという間に遊びに熱中した。看護師さんは本を読んでくれたり、一緒に遊んでくれたり、親切にしてくれた。手術をする前は、とても心配だったけれど、看護師さんたちがやさしくしてくれたので、少しきんちょうがとけた。
お医者さんの仕事は病気を治すことだ。けれど、患者さんのドキドキした気持ちをほぐしてあげないと、患者さんが不安になったり、ストレスがたまったりする。
A先生は、
「ますいのにおいはオレンジだよ。」とか、
「だいじょうぶだよ。」
と言って安心させてくれた。だからぼくはドキドキしすぎなかった。お医者さんの仕事は病気を治すことだけでなく、患者さんの気持ちを考えるやさしさも必要なんだとぼくは知った。
A先生に
「医者として一番大切なものは何ですか。」と聞いたら
「いつもこつこつ勉強をすること。いつでも、もっといい智恵があるかどうか勉強すること。」
と言ってくれた。だからぼくはこつこつ勉強してA先生みたいなやさしい医師になりたい。