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医師会からのお知らせ

第21回ふれあい医療作文コンクール

佳作
「安心感を与えられる人に」
土肥 玲奈
甲府南高校1年
私は中学2年生の冬、具合が悪くて幼い頃から通っている医院に行った。レントゲンを撮ってみると、肺に白い影のようなものが写っていた。私は病気のことなど何も分からなかったが、とても怖いと感じた。さらに、何人かの看護師さんが慌ただしく動き始め、恐怖が募った。しかし、お医者さんはそんな私の気持ちを察したのか、「大丈夫。大丈夫。」と言いながらいつも通りの笑顔を向けてくれた。私はその言葉と笑顔にほっとした。何か根拠があったのかなかったのかは分からないが、不思議と説得力があった。
その日のうちに私は大きな病院に行き、検査を受けた。そして、マイコプラズマ肺炎と診断され、私は生まれて初めて入院することになった。「入院」と聞いた瞬間、私はショックを受けた。そのとき、学校では生徒会役員選挙の活動が盛んに行われていた。私も立候補者の責任者として選挙に出なければいけなかった。そんな中での入院である。私の心は罪悪感で一杯になった。入院の説明を受けているときも、具合が悪いのと罪悪感とで冷や汗が止まらなかった。
病院での生活は味気ない日々だった。私の頭の中は「申し訳ない。」という気持ちで常に埋まっていたし、初めての入院でとても不安だったし、本当に落ちこんでいた。
看護師さんは、朝と夜の二回、点滴に薬を入れに来てくれる。その度に、看護師さんは私に安心感を与えてくれた。朝は「おはようございます。」と言いながら、元気にカーテンを開けてくれた。退屈な日々だったが、外からの日の光を浴びるとすがすがしい気分になれた。特に夜は、看護師さんの存在が大きかった。だんだん暗くなると、家族も家に帰り、小児科病棟だったため周りの子供たちも寝てしまい、静かさに包まれる。そうなると、急に不安や恐怖が私の心の中で大きくなり、何だかやりきれない気持ちで一杯になった。そのまま眠れないでいると、薬を入れるために看護師さんがやってきた。看護師さんは、「お薬入れますね。」「冷たかったら言ってくださいね。」と言って薬を入れてくれた。もちろんその言葉一つ一つもだが、看護師さんの声に私は非常にほっとした。とても温かくて優しい声だった。そして何より心が軽くなった。高校生になった今でも、鮮明に覚えている。
また、私は入院する半年前に腎臓を悪くしていた。そこで、この機会に主治医の先生が腎臓を診てくれることになった。私はとてもドキドキしていた。マイコプラズマ肺炎になった上に、腎臓にも問題があるなんて言われたら、と考えるだけで胸が痛かった。検査が終わると、先生は笑顔でこう言った。「大丈夫、何も悪いところはないよ。健康な腎臓だよ。」それを聞いて、私は胸をなで下ろした。検査の結果よりも先生の笑顔の方が、不思議と安心感を与えてくれた。
そして、私は無事退院することができた。そのとき私の胸には、自分でも思いがけない夢が生まれていた。看護師になりたい。私がお世話になったお医者さんや看護師さんのような、人に安心感を与えられる看護師になりたいと思った。振り返ってみれば、かかりつけの医院の先生や入院中お世話になった看護師さん、主治医の先生、たくさんの人が私に安心感を与えてくれた。「お医者さんだから。」という無意識な偏見もあったかもしれない。しかし、それ以上に温かさや優しさをもらったと思う。今回入院してみて、体や心が弱っているときに一番必要なものは安心感であると気付いた。そのことを教えてくれ、そして私に新たな夢を持たせてくれた、この出会いに感謝している。
今、高校生になり、将来について深く考えなければいけない時期になった。中学生の頃は分からなかった社会が見えるようになり、正直とても困惑している。しかし、私が将来どの道に進むことになっても、絶対に貫き通したい信念がある。それは、人々に安心感を与えることができる人になることである。私は、中学2年生の冬にもらったあの温もりを忘れない。そして、私を救ってくれたあの笑顔を、絶対に忘れない。