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医師会からのお知らせ

第21回ふれあい医療作文コンクール

優秀賞
「「ふれ合う」医療」
落合 紗弥
駿台甲府小学校6年
これまで、私は、医療というものは、最新技術を用いて病気やケガを治し、健康な生活を送ることができるようにするものだと考えていました。そのために、医療の技術や機械、薬品、施設など、数多くの研究が重ねられ、著しく進歩してきたのだと思います。例えば、iPS細胞の研究は、病気のもととなる器官を補うものとして、注目されています。テレビや新聞でも、毎日のように新たな治療に関することが報じられています。
しかし、著しい医学の進歩とともに、そうした従来とはまた異なる新しい医療の役割も大切になってきているのではないか、と思います。
ひとつには、病気やケガを予防する医療があげられます。予防接種や衛生、環境の改善、バランスのよい食生活などは、主に病気を予防するために必要になってくることです。そこに、医療の知識や指導などが大きな役割を担っています。
その一方で、終末期医療とされるものの役割も非常に大きくなってきています。
終末期医療とは、回復の見込みのない患者さんのための医療で、主に命をのばすための治療や看護ではなく、精神的な辛いこと、苦しいことを少しでも減らす、つまり最後まで幸せな人生を感じてもらうための医療です。
私の祖父は、3年前のクリスマスに亡くなりました。3年以上にわたって、治療を受けて病気と戦ってきました。ある日、祖父は真っ白い病院から、木造のあたたかいホテルのような建物に転院しました。庭が見えるベランダがあり、家族と一緒にいられる時間が配りょされていました。私は、とても過ごしやすい所だと思いました。このような心休まる所で治療を受ければ、祖父はきっとよくなるだろう、と考えました。実は、まだ私は幼くて、転院の意味をあまり、よく理解してはいなかったのです。
看護師さんは、とても優しそうで、祖父も気持ち良さそうでした。
ところが、祖父は、クリスマスの日に亡くなりました。ガンは回復しなかったのです。
私はとても悲しくなりました。ずっと泣きました。
祖父の遺体を、ホスピスの人は、きれいにふいてくれました。祖父は、気持ち良さそうに眠っているようで、幸せそうでした。
 病室の外では、クリスマス会をやっていました。女の人がピアノを弾きながら歌を歌っていて、お年寄の人たちが、その歌を目を細めながら聴いていました。九歳の私でも、ここはただの病院ではないのだな、と思いました。きっと、患者さんに楽しんでもらう配りょや行事がたくさんある所なんだな、と。
祖父は亡くなる直前に「ありがとう」と言いました。その言葉には、きっと、私達だけでなく、ホスピスの人への、感謝の気持ちがあったのだと思います。
現代では、「治す」医療だけでなく、「幸せにする」医療の役割も大事になってきているのです。たとえ、治らない病気であったとしても、幸せな人生を送ることができて、最後に感謝される、という生きる喜びと生きる価値があることを教えてくれる医療、それを患者と家族と共に考える医療。こうしたことが、とても重要になっているのだと思います。
祖父の入院を通して、技術や知識だけでなく、患者との心のふれあいや、家族の心をいたわる医療というものの尊さを知ることができたと考えています。